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解体工事の際に発生する有害物質「アスベスト」を徹底解説

建物を壊すいわゆる解体工事では、当然のことながらたくさんの建築廃材が発生します。このほかにも有害物質が発生することは多くの人が知るところでしょう。

解体時に発生する有害物質として有名なアスベスト。いまでは一般の人たちにも知られるようになりましたが、かつては建設・解体業界の人たちしか知らないものでした。
この背景には、かつて巻き起こった「アスベスト問題」があります。これにより、有害物質としてアスベストがニュースで大きく取り上げられ、その名が世間に広く知れ渡ることになったのです。

今回は、解体工事につきものである有害物質「アスベスト」について解説します。アスベストは私たちに深く関係するものですから、これに関する知識はぜひとも備えておきましょう。

有害物質「アスベスト」とは


解体工事と密接に関わりあう有害物質「アスベスト」ですが、これを詳細に知る人は意外と少ないものです。ここで”アスベストとはどんなものか”、これを解説します。

有害物質アスベストとは



アスベストは繊維状になった天然鉱石です。あまり一般的ではありませんが、「石綿 (いしわた) 」とも呼ばれています。
アスベストと我々の関係は非常に深く、そのはじまりは太古にまで遡ります。アスベストは遠い昔、布を作る原料として利用されていたのです。
近代においては優れた耐熱性と保温性、絶縁性が注目されるようになり、その用途が様変わりしました。アスベストのこうした性質を活かし、建設資材をはじめ自動車や電化製品、家庭用品など、さまざまな製品に利用されることになりました。ところが冒頭に挙げた「アスベスト問題」によって、労働関係者が訴えていた健康被害とアスベストの因果関係が認められる事態に。
これが契機となり、翌年の2006年に「製造」はもちろん「輸入」や「使用」など、その取り扱いが全面的に禁止されました。そのため、現在では新たにアスベストが使用されることはなくなりました。

アスベストの危険性


人体への影響が非常に大きく、深刻な病のリスクをもたらすアスベスト。
このアスベストには発じん性 (飛散のしやすさ) に応じたレベル分けがされています。このレベルは1~3まであり、この数字が若いほど危険度 (発じん性) が高いことを示しています。各レベルの概要は以下の通りです。

レベル1 (発じん性が極めて高い)


レベル1に該当するアスベストは、建物に吹き付けるような形で使用されているものが主となります。これは壁や柱、天井、屋根など、建物の多くの箇所にみられます。これを迂闊に解体してしまうとアスベストが飛散してしまうため、解体作業を行う前に特殊な防護材を吹きかけてアスベストを封じ込めます (封じ込め工法)。また、板状の材料を使用してアスベストを密閉しながら除去を行います (囲い込み工法)。
この撤去作業の前には、アスベスト除去工事の看板を掲示して周知の徹底や作業場の清掃、前室や負圧除塵装置の設置など、十分な事前準備を整える必要があります。これに加え、作業員に対しては防護服の装着が義務付けられているほか、その作業を行うにあたり必ず特別教育を施すことになっています。このようにレベル1のアスベスト除去に際しては、相当な時間と手間を要します。

レベル2 (発じん性が高い)


シート状のアスベストが使用されている場合、これに該当します。アスベストがシート状になっているため、レベル1に比べると発じん性は低くなります。このようなシート状のアスベストは、配管の保温材・断熱材として使われるケースがほとんどです。
レベル2のアスベストに対してもレベル1と同様、封じ込め工法や囲い込み工法といった方法で対処されます。
このレベル2もレベル1に準じる対策が必要となり、除去作業の際には除去箇所を湿らせてアスベストの飛散を防ぐための湿潤化作業を行います。

レベル3 (発じん性が比較的低い)


このレベルの発じん性は極めて低いとされ、除去箇所の湿潤化を行うだけの程度となります。レベル3の場合には、簡易的な防護服での作業となるケースが一般的です。
レベル1とレベル2では除去を行う際に各届出が必要となりますが、このレベル3の場合には不要となります。

アスベストがもたらす病気とは


最後に有害物質アスベストがもたらす病気を以下にご紹介します。これらをご覧いただければ、アスベストがいかに危険なものであるかお分かりいただけるに違いありません。

有害物質アスベストが引き起こす病気



主な病気として、

【悪性中皮腫】
症状:胸の痛みや咳、胸水 (肺のまわりに水が溜まること) 、呼吸困難など

ほかにも、
肺がん (咳、息切れ、血痰、胸痛、呼吸困難、体重減少など)
肺線維症 (息切れや咳など。重篤化すると呼吸困難、呼吸不全、低酸素血症)
良性石綿胸水 (呼吸困難、胸痛など)

ご覧いただいた通り、アスベストは悪性中皮腫や肺がんの原因となります。特に肺がんはいわずと知れた脂肪率の高い病気ですから、アスベストは非常に恐ろしい有害物質であるといえるでしょう。

アスベストとは長い付き合いに


解体工事の際に必ずといってもいいほど関わってくる有害物質アスベスト。
2006年にその使用が禁止されたものの、それ以前にはごく一般的に使用されてきました。そのため、2006年以前に建設された建物にはアスベストが断熱材として使用されている可能性が非常に高いのです。ですから私たちは今もなお、アスベストに囲まれながら生活しているということになります。

私たちの周りからアスベストが完全になくなる日が来るのは、これからまだまだ先の話になるといえるでしょう。

2020.1.3