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解体業者の選び方

解体工事における安全対策にはどんなものがある?

解体工事は大きな重機を使用したり、足場を組んで高所で作業をすることなどから、安全対策が不十分だと大きな事故につながりかねません。解体工事における事故は周辺の住民などにも被害が及ぶ可能性が比較的高いため、安全対策については施主である依頼主もきちんと把握しておく必要があります。また、安全対策について知識を持っておけば、依頼先の解体工事業者が十分な安全対策をしているか確認することができます。安心して工事を依頼し進めてもらうためにも工事に関する安全対策の法律や取り組みについて知っておきましょう。


行政による安全対策と業者による取り組みについて知ろう


解体工事における安全対策は、行政が定めているものと解体業者が取り組んでいるものがあります。法律で義務付けられている以内にかかわらず、できるだけ多くの対策がされている事が重要です。


1.行政による安全対策


行政が定める安全対策の基準は解体工事における安全対策の基本です。解体工事の現場において、以下で紹介する法律や規則を守ることが安全な工事につながります。国が定めている安全対策に関する基準として、労働安全衛生法、国土交通省による災害防止対策に関するガイドライン、各地方行政ごとの指導の3つがあります。

労働安全衛生法


国で定められている安全対策基準として労働安全衛生法(通称:労安衛法)が挙げられます。この法律は労働災害を防ぐために労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境を作ること目的とした法律です。労働災害の防止対策や労働者の危険を防止する為の措置、機械や危険物に関する決まり等について定めています。具体的には、一定規模以上の事業場における責任者の選任、衛生管理委員会の設置、作業員に向けた安全教育、などが義務付けられています。

労働安全衛生規則


労働安全規則は労働安全衛生法に基づき、労働の安全衛生について決めた法令です。解体工事に限らず様々な工事や労働環境に関する規定が定められていますが、特に解体工事に関連する規定としては、アスベストに関する飛散防止対策の強化や、解体工事で使用する機械に規制を設ける等が定められています。

国土交通省が定めるガイドライン


安全対策の基準としては前の項目でご紹介した法令や規則に加えて、「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン」というものがあります。これは国土交通省が建物の解体工事における事故を防止するための安全対策の基準を示したガイドラインで、平成15年6月に策定されたものです。策定のきっかけとなったのは平成15年3月に静岡県富士市で発生した解体工事現場における外壁の崩落事故で、現在でも解体工事における安全対策の基準として利用されています。具体的には、解体予定の建物の事前調査、施行計画の作成、事故の発生予測を含んだ工事計画の作成とその実施などを規定しています。法令などとは異なり法的拘束力の無い規定のため、遵守していない業者が罰せられたりすることはありませんが、このガイドラインをきちんと把握しているかどうかを確認することが、安全対策に力を入れているかどうか判断することにつながります。


2.解体工事業者による事故防止への取り組み


行政で規定されている安全対策以外に、多くの解体工事業者が行う安全対策への取り組みがあります。ここではKY活動と5S活動の2つをご紹介します。

KY活動


解体工事業者が工事を開始する前に行う安全対策として、KY活動があります。KYとは危険予知の略で、工事の開始前に事前調査をもとに工事中に起こりうる危険を検討し対策を考える活動です。具体的には、まず現場に重機の衝突や高所からの転落などの危険がないか事前調査で得た情報から把握します。そして、危機意識を作業員で共有した上で起こりうる危険要素について話し合いをし、作業員内で指摘し合うことで意識の共有を具体的な対策へとつなげます。さらに、危険をどのようにして回避するか意見を出し合います。その中で適切な解決法を見つけ出し、具体的な行動目標におとしこみます。最後に工事に携わるメンバー全員でそれをしっかりと共有します。この流れはあくまでも一般的なもので、詳細は工事業者によって異なります。

5S活動


5Sとは整理、整頓、清掃、清潔、躾のローマ字の頭文字を取った言葉です。この5つの事柄に基づいた業務管理の体制のことを5S活動と呼びます。具体的な活動内容としては、いらないものはすぐに適切に処分する(整理)、使用した後の工具や機械は所定の場所に戻していつでも取り出せるようにする(整頓)、掃除を常に行って現場が汚れていないようにする(清掃)、整理・整頓・掃除を常に現場で維持する(清潔)、作業メンバー全員が決められたルールや手順を守って工事における正しい習慣を身につける(躾)、というものです。これらを守って工事を行うことで、一つひとつの作業を丁寧に行う意識を持つことができ、現場の安全性を高めることができます。

まとめ


今回は解体工事における安全対策について、行政によるものと解体工事業者によるものをご紹介しました。行政による安全対策の基準は解体工事現場における安全対策の基本となるものです。労働安全衛生法や労働安全衛生規則、国土交通省によるガイドラインがあります。また、解体工事業者による安全対策にはKY活動や5S活動があります。これらは工事を安全に進めるための規則や現場の環境を整備しておくために必要な取り組みです。工事業者が国の定める法令や基準に則り、十分に安全対策への取り組みを行うことで、解体工事現場における事故の可能性を減らすことができます。安全に工事を進めたいと考えている方は解体業者を選ぶ際などに是非参考にしてみてください。

2020.5.8