解体業に必要な許可や資格とは? 関連資格についても解説!
わが国では、空き家の数が年々増加しており、平成30年に行われた総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家の総数は846万戸、総住宅数のうち、空き家の割合は13.6%を占めています。また、2030年を過ぎると、その割合は30%にまで上昇すると推測されています。このことから、現在では老朽化した建築物の解体工事の需要は高まっています。では、解体工事を行うためには、どのような資格が必要になるのでしょうか。今回は解体工事に関連した資格や許可に関してご紹介します。
解体工事業とは
解体業とは、文字通り建築物の一部または全部を取り壊す、つまり解体する建設工事の一つです。かつて、解体工事によって発生するアスベスト(石綿)などの公害が大きな問題となりました。適切な方法で工事をしないと、周囲の環境に悪影響を及ぼしかねないため、解体工事を行う上で、専門知識や経験は必須となります。
解体業で必要となる許可や資格
解体工事を行うためには、必ず「建設業許可」または「解体工事登録」が必要になります。ここでは、この2種類の違いや必要となってくる条件について解説していきます。
解体事業登録
解体工事業の許可がない場合でも、建設リサイクル法で定められた、「解体事業登録」を行えば、実際に解体工事を行うことが可能です。解体事業登録は、建設業許可とは異なり、工事金額が500万円未満のものに限って行うことが可能です。また、作業現場となる都道府県知事ごとに事前申請、登録が必要になります。解体事業登録をするためには、建設リサイクル法における「技術管理者」が必要になります。技術管理者とは、工事現場での施工の技術や安全の管理をする指導者のことを指します。技術管理者になるためには、求められる資格の保有、一定年数以上の現場での実務経験、のいずれかが必要となります。
必要な資格
技術管理者として必要な資格は11種類が対象となります。
一級建築士、二級建築士
一級建設機械施工士、二級建設機械施工士
一級土木施行管理技士、二級土木施行管理技士
一級建築施行管理技士、二級建築施行管理技士
一級とび・とび工、二級とび・とび工
解体工事施工技士
上記のいずれの資格を保有していなくとも、現場での実務経験を一定期間経ることで、技術管理者として解体事業登録を行うことができます。
大学(土木工学等の指定学科卒):2年
高校(土木工学等の指定学科卒):4年
その他:8年
また、解体事業登録には3.3万円の登録手数料がかかります。また、建設業許可に比べて、必要書類が少なく登録費用も安いことから、取得し易いです。そのため、規模の小さな建設会社や解体工事を専門に行う業者が利用する場合が多いです。
建設業許可
解体工事を行うためには、建設業法に定められた「解体工事業」という建設業許可が必要になります。この許可を取得するには、工事を行う都道府県知事に申請登録を行う必要があります。また、複数の都道府県で作業を行う場合には国土交通省に申請し、許可を得なければなりません。建設業許可には、工事金額に上限がなく、一度許可を取得すれば、日本全国で営業することが可能です。
かつて建設業法が定められてから45年間、建設業における業種区分は28種類あり、そのうち「土木工事業」「とび・土木工事業」のいずれかの許可があれば、解体工事を行うことが可能でした。
しかし、建物の老朽化によって、解体工事の需要が年々増加していることから、平成28年6月1日に建設業法が改正され、新たに「解体工事業」の業種区分が追加され全29種となり、現在では500万円以上の解体工事を行うためには、この解体工事業を建設業許可を取得することが必要となりました。
建設業許可の取得には、知事許可の場合は9万円、大臣許可の場合には15万円の手数料がかかります。また、申請に必要な書類も解体事業登録に比べ多い(必要書類は各都道府県ごとに異なります)ため、中規模以上の建設会社や解体工事の他に事業を行っている業者が多いです。
また、解体業を行うための条件や資格の他に、解体工事の種類によって、別途必要となる資格が多くあります。そのため、解体工事には、関連する資格を持った人材を確保する必要もあるのです。実際に、解体工事に関連する資格の中で主要なものをいくつかご紹介します。
足場の組立て等作業主任者
高さ5m以上の建築物の足場の設置や解体する場合に必要になります。
建築物等鉄骨の組立て等作業主任者
建築物の構成が鉄骨で、その高さが5m以上のものを組立てや解体する場合に必要になります。
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者講習
建築物がコンクリートで構造されており、その高さが5m以上のものの解体や破壊作業を行う場合に必要になります。
クレーン運転士・玉掛け技能士
解体工事で小型クレーン車を使用したり、玉掛け作業を行う場合に必要になります。
石綿作業主任者
解体作業前の調査で、石綿(アスベスト)が発見された場合、その健康被害を防ぐために、石綿の適切な処理や作業の指揮や管理をするために必要です。
解体工事施工技士について
解体事業登録に必要な資格の一つに「解体工事施工技士」というものがあります。この資格は公益社団法人である全国解体工事業団体連合会(全解工連)によって1993年に創設されたもので、建設業法における国土交通大臣登録試験です。これは、数ある国家資格の中でも唯一、解体工事に特化した資格になります。解体工事における施工や工法などはもちろん、解体先の事前調査や見積り、廃棄物の適切な処理方法などに関する専門的な知識や技術が必要になります。この資格を保有していれば、解体事業登録ができることに加え、顧客への信頼度も上がるといったメリットもあります。解体工事施工技士の資格を得るためには、一定期間以上の実務経験に加え、国家試験に合格しなければなりません。
資格創設の背景
この資格が創設された背景には、解体工事数の増加、解体工事による災害の増加、廃棄物や有害物の適正処理などの理由が挙げられます。
実務経験
解体工事施工技士の受験資格として、解体工事現場での実務経験が必須となります。学歴に関係なく資格が与えられますが、最終学歴の卒業から起算して最短で1年6ヶ月、最長で8年かかります。
大卒(*指定学科):1年6ヶ月以上
大卒(指定学科以外):2年6ヶ月以上
短期大、高専卒(指定学科):2年6ヶ月以上
短期大、高専卒(指定学科以外):3年6ヶ月以上
高卒(指定学科):3年6ヶ月以上
高卒(指定学科以外):5年6ヶ月以上
その他(中卒):8年以上
終わりに
今回は解体事業を行うために必要になる2つの許可と登録について、そして解体工事に関連する資格に関してご紹介しました。実際に解体工事を行うためには、事業者が必要な許可や登録の他にも、解体工事に関連する資格を保持した人材を確保する必要があります。また、解体工事の需要は、今後も空き家の数は増加し続け、建物の老朽化も進んでいくことから、年々高まることが予想されます。
2020.3.30