あんしん匠サポートセンター

解体業者の選び方

初めてだと分かりづらい木造住宅の解体工事。その費用や流れを紹介します

日本には約3,011万戸の木造住宅があります。鉄筋コンクリートや鉄骨の家が増えているとはいえ、まだほとんどの住宅は木造です。これらの木造住宅は、メンテナンスをしなかった場合、築40年くらいで寿命を迎え、解体の時期がやってきます。思い入れのある家を解体するのはどこか名残惜しいものですが、最後まで問題なく工事ができるよう、費用や業者選び、解体の準備から後始末までの流れを把握しておくと良いでしょう。

木造住宅の解体準備


住宅の解体は人生でそう何度もすることではありません。初めてのことはどこから手をつけて良いのかもわからないものですが、後で後悔することのないように、解体業者に任せっきりにせず、一緒に現地調査をしたり、見積書の内容を比較して、自分自身できちんとチェックしていきましょう。

>木造住宅の解体費用

平均的な木造住宅の解体単価は、一坪で3~5万円です。40坪の家であれば120万円程度ということになりますが、あくまで目安としての数字です。基本的には一括払いですが、空き家解体ローンを組むこともできます。発注にあたっては、住宅を造ったハウスメーカーに解体を依頼すると、解体は下請業者に丸投げになった上で約20-40%の中間マージンを支払わされてしまうので、自分で解体業者を探すと良いでしょう。また、古い家の解体に関しては助成してくれる自治体もあるので、解体前に確認して手続きを行いましょう。

>業者選びの方法

信頼性の高い業者を選ぶためには、3社程度の業者の現地見積もりを比較する「相見積もり」がおすすめです。足を運んでもらうので申し訳なく感じるかもしれませんが、予想以上に費用がかかることもあるので、業者も現物を見るまでは費用の概算を伝えたがりません。実際に現地見積もりをしてみると、数十万円の差が出ることもあるので、内容を見比べてみて、疑問点があれば聞きましょう。見積書の内容は、大きく分けて建物本体の解体費用と、仮設養生、残置物の処理や住宅周辺の付帯工事、その他輸送費や書類申請にかかる手間賃となっています。

解体工事の準備


>ライフラインの停止

解体工事の前に、電気とガスを止めます。水道は、粉塵を防ぐために水を撒きながら作業することがあるので、止めなくても構いません。本棚やテーブルなどの家具類は、不要であれば廃材の木材やプラスチック類と一緒に処分できるので、解体業者に相談しましょう。

>近隣への挨拶まわり

建設リサイクル法に則って、解体工事の開始7日前までに役所の建築関係に、解体の届出を出します。ほとんどは慣習的に解体業者が代行してくれます。その後、業者と一緒に近隣への説明と挨拶まわりをします。こちらのタイミングは、工事が始まる1週間前くらいまでが良いでしょう。解体場所や日程、週に何日くらい作業をするかなどをしっかり説明して、近隣の方の心配を取り除きましょう。建機が道路を塞いでしまうこともあるので、場所によっては、現場周辺の50軒以上の家を回ることもあります。挨拶状、粗品なども解体費用に含まれてきます。

>アスベスト調査

使用されている建材にアスベスト(石綿)が含まれているか調査することが法律で義務付けられています。アスベストは天然の鉱物で、吹き付けると高い断熱性があることから多く利用されてきました。しかし、細かい繊維状のアスベストは吸い込むと発がん性があることがわかり、現在は使用を禁止されています。万が一、住宅にアスベストが使われていたら、解体工事をする前に除去することが必要になります。

木造住宅の解体から整地までの流れ


木造住宅の解体は、何日もかかる作業です。30坪程度であればおよそ4日程度で済みますが、規模や立地条件によっては10日くらいかかることもあります。特に、重機が入れない家や、隣家と一枚の壁を共有している場合は、手を使って壊すので、日数は多めにかかります。さらに、地下から古い井戸や廃材などの地中埋設物が出てくることもあり、それらの処分にさらに時間がかかる場合もあるでしょう。

>木造建築の解体工法

木造住宅の解体は、一般的に、「手こわし併用機会分別解体工事」という工法で解体されます。最初は職人が、フリーハンドで内装を撤去し、窓や畳などを取り外して外に運び出します。これは建設リサイクル法で、現場での分別解体と素材ごとのリサイクルが定められているからです。内装の分別と搬出が終わったところで、粉塵が飛散したり、重機で家を解体する音が響かないよう、建物の周りを養生シートで覆ってから、現場にショベルカーを入れて、壁や床を壊す作業を進めます。機械で壊しながら、職人が手で廃材を分別し、品目ごとにまとめてトラックで運び出していきます。

>木造住宅の基礎を撤去

続いて基礎の解体に移ります。木造住宅には「ベタ基礎」か「布基礎」が使われていることが多いです。ベタ基礎の場合は床下一面を鉄筋コンクリートで覆うので、かなり強度があり、木造住宅にはよく用いられています。コンクリート面が多いので、解体ではそれだけ強い力で壊すことになり、手間がかかります。一方「布基礎」は壁の下に逆Tの字型の基礎を並べて配置したものです。コンクリート面が少ないので、ベタ基礎よりは解体が早く終わります。基礎の撤去に関しては、見積もり時には、地上に見えている部分から費用を計算しているので、設計図がなく、解体中に地中から新たに基礎梁が見つかった場合には、追加費用がかかります。

>整地作業

最後にコンクリートガラや大きな石、ガラスなどを拾って土だけの状態に戻し、転圧作業を行います。自分で建て替えをするときには、粗めの整地でも構いませんが、転売するとしたら、なるべくきれいに整地してもらいましょう。表面がデコボコのままだと、土台が傾いたりする恐れがあるので、次に家を建てる施主が、また重機を運んできて整地しなおすことになり、それだけで10万円程度の費用がかかってしまいます。解体業者によっては真砂土などの化粧砂を敷いて、見栄えを良くしてくれるところもあります。

>地中埋設物が見つかったら

昔は、処分費用を浮かせるために、解体した後の産業廃棄物をそのまま埋めてしまうことがありました。現在は違法行為となっていますが、これらが見つかった場合、施主が責任を持って処分するように法律で定められています。電気コードや古着、住宅の一部などが埋められていたら、仕分けして処理すればよく、処分費用もそれほど多くはかかりません。一方で、古い基礎杭や大きな浄化水槽、井戸などが見つかってしまうと、引き抜き工事が別途必要になるので、処分費用もそれなりに膨らみます。これらは見積もりを出した段階ではわからないので、追加費用として計上されます。あらかじめ業者と話し合い、見つかった場合にどれくらいの費用負担が発生するのか確認しておくと良いでしょう。

>廃材の不法投棄に注意

施主が見ていないところで、業者が廃材を不法投棄してしまう例が確認されています。廃棄物の処理にはそれなりのお金がかかるため、廃棄物を山林に捨ててしまうのです。これを防ぐために、契約前に、別の解体工事の「産業廃棄物処分証明(マニフェスト票)」の控えを見せてもらい、処分の流れを把握しておくことが大切です。また、「不用品の無料で引き取り」をうたっている業者が、後から理由をつけて料金を請求してくることがあります。条件などをよく話し合い、不安があれば別途契約書を作ることもできます。

まとめ


木造住宅の解体工事における坪単価は、だいたい3~5万円です。一定の相場はありますが、建設リサイクル法による分別解体の義務付けや処分費用の負担なども相まって、コストは上がり気味になっています。さらに、建設業界では職人不足が長引いており、人件費が高くなっています。そのため、建築・解体費はますます高騰することが予想されます。安心して木造住宅を解体するためにも、解体費用はある程度余裕をもって確保しておいた方が良さそうです。

2020.1.28