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アスベストは何が問題?アスベスト問題の概要

アスベストによる健康被害は「アスベスト問題」として社会に大きなショックを与えました。今回は、そんなアスベストとアスベスト問題の概要、アスベストに関する法律制定の歴史などをご紹介します。

アスベストとは


アスベストは天然にできた鉱物の一種です。軽い綿状の性質を持った石のため、石綿(せきめん)ともいわれています。アスベストにはアモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、ク­­­リソタイル(白石綿)などの種類があります。日本ではクリソタイルが最も多く建築資材として使用されてきました。

アスベストが使用されてきた背景


アスベストはその加工のしやすさ、耐火性、耐熱性、電気絶縁性、耐腐食性から主に高度経済成長期に建築物の断熱材、防音材、保温材として生活のさまざまな場面で大量に使用されてきました。

アスベストの用途


アスベストを含む建材は大きく以下の用途に分けられます。

吹き付けアスベスト


セメント、水とアスベストを一定の割合で混ぜ合わせ、吹き付け施工したものを吹き付けアスベストといいます。鉄骨造建造物の梁や柱に耐火被膜用として、ビルの機械室や学校、地下駐車場、体育館、工場などの天井や壁に吸音、断熱用として使われていました。

アスベスト保温材


アスベスト保温材はアスベストとその他の天然鉱物を原料に成形した保温材で、主にボイラーや配管の絶縁部に使用されていました。

アスベスト耐火被膜板


アスベスト耐火被膜板は、吹き付けアスベストと同じ配合比で型枠で成形されたもので、吹き付けアスベストの代わりに耐火被膜用として鉄骨造建造物の梁や柱に使われていました。

アスベスト断熱材


アスベスト断熱材は断熱、耐火を目的として煙突や屋根の裏打ちなどに使われていました。

アスベスト成形板


アスベスト成形板は建築用の成形版としてさまざまな場所に使用されてきました。比較的アスベストの密度の高い建材で住宅屋根用の化粧スレートが代表的ですが、そのほか内外装用の成形板も存在します。

アスベスト問題とは


平成17年6月に、アスベストを使用していた事業場の従業員が悪性中皮腫や肺がんにより死亡していたことや、従業員の家族や事業場周辺の住民が悪性中皮腫を発症、死亡していたことが明らかになりました。また、ほかにもアスベストによる健康被害が明るみに出たことにより「アスベスト問題」は大きな社会問題となりました。

アスベストによる健康被害の例


アスベストによる主な健康被害には、具体的に以下が挙げられます。

石綿肺


アスベストを含んだほこりを大量吸引すると起こる肺の繊維増殖性の変化を「石綿肺」といいます。主に多くのアスベストを取り扱う職業の人がなりやすいといわれます。進行していくと呼吸困難、乾性咳嗽、疲労といった症状があらわれます。

肺がん


アスベストを吸い始めてから20~40年後には肺の悪性腫瘍、つまり「肺がん」を発症する危険性があるといわれています。さらに喫煙者の場合、そのリスクはさらに高くなるといわれています。多くの場合はじめは無症状ですが、進行していくにつれて息切れが起こったり咳や痰に血が混じったりといった症状が出てきます。

悪性中皮腫


悪性中皮腫は胸膜、腹膜などに発生する悪性腫瘍です。アスベストを吸引してから30~50年後に発症するといわれています。石綿肺を発症しない程度のアスベスト量でも起こることがあります。進行していくと、胸の痛み、息切れ、咳などの症状があらわれます。

アスベストによる健康被害の発症率


アスベストをどれくらい吸引したら健康被害が発症するか、予測することは難しいです。ただアスベストによる肺がんは大量のアスベストを吸うほど発症しやすいのに比べ、悪性中皮腫は少ない量のアスベストでも発症するといわれています。

アスベスト規制の歴史


高度経済成長期には大量のアスベストが使用されていましたが、大気汚染防止法や労働安全衛生法、廃棄物処理法、建築基準法などの制定を通してアスベストに関する規制も次第に強化されるようになりました。現在日本では、0.1%を超えてアスベストを使用している製品の製造や使用、輸入が禁止されています。

終わりに


アスベストは天然鉱物の一種で、高度経済成長期には大量のアスベストが建材として多くの建築物に使用されてきました。アスベストを含む建材は、断熱材、防音材、保温材などに使われ、一昔前まで我々の身近に存在していました。しかし、アスベスト吸引による石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などの健康被害が増えてきた背景から、現在日本ではアスベスト使用が規制されています。使用は規制されているものの、アスベストによる健康被害が出るまでは数十年かかるといわれるため、今後も被害が拡大していく可能性があります。

2020.2.3