解体工事依頼前に要確認!解体業者と依頼主に求められる安全対策をご紹介
厚生労働省がまとめた「労働災害発生状況」だけ見ても、建設業における労働災害は、今もなお多く発生していることが伺えます。そのような状況を踏まえ、解体業者は国が定めた法律・ガイドライン等に則った安全対策を講じなければなりません。
今回の記事では、安全な解体工事を実施するために、依頼主側も知っておくべき安全対策について触れていきます。
まずは、解体工事中に発生する事故がどのような原因によって引き起こされているかを把握しておきましょう。実際の解体工事で起きた痛ましい事故の内容を紐解いていくと、後述する労働安全衛生法等に違反していたケースがほとんどであることが伺えます。
下記リンク先では、解体業者が地盤等の事前調査や振動抑制措置を怠り、解体工事の振動によって隣地の建物に亀裂を生じさせたため、訴訟にまで発展したケースが紹介されています。
▼匠総合法律事務所「下請業者が行った解体工事の振動により近隣建物に発生した亀裂等の損害を,事業主が被害者に賠償した上で,当該下請業者に対して,被害者に賠償した金額を損害として賠償請求した訴訟事件」
労働安全衛生法で定められている(足場を安定させるための)作業床の設置、安全帯の着用といった安全対策を講じていなかったために、作業員が高所から転落するという事故が後を立ちません。
▼労働新聞「墜落防止措置を講じず送検 解体現場で脊椎損傷労災」
労働安全衛生法では、解体用機械使用中は、飛来物の危険がある場所に運転者以外を立ち入らせてはならないと定められていますが、それを怠たったがために、作業員の頭部に飛来物が直撃するという悲惨な事故が起きました。
▼労働新聞「解体現場で頭に飛来物が直撃し死亡 建設会社を送検 立入禁止措置講じず」
以上の過去に起きた事故を踏まえ、解体業者は、痛ましい事故がこれ以上発生しないように、安全対策を打つことが求められます。
依頼主としても、下記の法律や省令、ガイドラインがあることをあらかじめ理解しておき、解体業者の安全対策が十分になされているかどうかをチェックしましょう。
この法律は、労働者の安全と健康を守ることを目的としています。条文にて、「労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確率、責任体制の明確化および自主活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」(労働安全衛生法第1条から引用)と記載されている通り、解体工事で起こりうる危険から作業員を守るための措置について定めています。
▼労働安全衛生法についてより詳しく知りたい方はこちら
(社)安全衛生マネジメント協会「労働安全衛生法とは」
労働安全衛生法に基づいて、労働の安全衛生に関する規則が策定されています。解体工事においては、アスベスト飛散防止策や解体用機械の取り扱いに関して、具体的な危険防止措置を定めています。
▼中央労働災害防止協会安全衛生情報センター「労働安全衛生規則」
①建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン
平成15年に静岡県富士市で発生した解体工事での痛ましい事故(参考:
)を受けて、国土交通省が発表したガイドラインです。
具体的には、「事前情報の提供・収集と調査の実施による施工計画の作成」「想定外の状況への対応と技術者等の適正な配置」「築物外周の張り出し部、カーテンウォール等の外壁への配慮」「増改築部等への配慮」「建築物の設計図書等の保存」といった安全防止措置を講じるよう推進しています。
詳しくは、国土交通省の下記サイトもご確認ください。
▼国土交通省「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドラインについて」
▼国土交通省「建築物の解体工事における外壁の崩落等による事故防止対策について」
②建築工事安全施工技術指針
事前調査や仮設物・足場等の計画、仮囲い(養生シート)の設置、機械の点検整備等といった解体業者が講ずべき安全策について、より具体的に明記されています。
▼国土交通省「建築工事安全施工技術指針」
東京都内や住宅エリアでの解体工事では、道路上で作業を行わなければいけないケースが多々あります。
そのような場合、解体工事中の道路上での事故等を防ぐため、解体業者は、事前に管轄の警察署から「道路使用許可」を得たうえで、工事をすることが定められています。
下記警視庁のサイトにて、申請手続きの手順等が解説されていますので、工事開始前に確認しておきましょう。
▼警視庁「道路使用許可の概要、申請手続等」
解体業者によっては、経験や専門性を武器に、独自の安全対策を講じている場合があります。そういった高い意識で安全対策に取り組む業者を選ぶことで、未然に事故を防ぐことができます。
依頼する解体業者がどのような安全対策を講じてくれるのかを事前にHP上で確認したり、打ち合わせで直接尋ねたりしてみましょう。
KY活動とは「危険予知活動」の略称で、工事開始前に作業員同士で行われるシミュレーション・訓練活動のことを指します。
現場で起こりうる危険性について、事前に作業員同士で予想し話し合う機会を設けることで、作業における安全性や効率性を確保できるようになるため、多くの解体業者がKY活動を取り入れています。
5Sは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」のことを指し、これらの作業は安全で快適な現場づくりの基本となります。解体業者が各作業を丁寧に行ってさえいれば、工事現場の環境美化が保たれ、その分事故につながるような危険要素を取り除くことができます。
▼労働新聞「5Sから始まる職場づくり」
解体業者がどんなに安全対策を講じていたとしても、悪天候等の外的要因による事故のリスクは付きまといます。
もしもの時に備えて、解体業者と契約を結ぶ前に、保険(特に賠償責任に対応できるもの)に加入しているどうかについても確認しておきましょう。解体業者によって加入している保険の種類は異なるため、注意が必要です。
解体工事における安全対策については、解体業者に任せきりにせず、依頼主側も当事者として共に考えなければいけないことです。
そうしなければ、工事費用を安く抑えることばかりに気がいってしまい、安全対策を怠るような解体業者に依頼してしまう事態にもなりかねません。また、第三者を巻き込む損害が生じた場合、依頼主も賠償責任を問われることがあります。
不要な事故・トラブルを避けるためにも、今回の記事を参考に、安全対策について解体業者とよく話し合ったうえで契約・工事を進めるようにしましょう。
今回の記事では、安全な解体工事を実施するために、依頼主側も知っておくべき安全対策について触れていきます。
過去の事故事例から学ぶ
まずは、解体工事中に発生する事故がどのような原因によって引き起こされているかを把握しておきましょう。実際の解体工事で起きた痛ましい事故の内容を紐解いていくと、後述する労働安全衛生法等に違反していたケースがほとんどであることが伺えます。
近隣住宅の破損
下記リンク先では、解体業者が地盤等の事前調査や振動抑制措置を怠り、解体工事の振動によって隣地の建物に亀裂を生じさせたため、訴訟にまで発展したケースが紹介されています。
▼匠総合法律事務所「下請業者が行った解体工事の振動により近隣建物に発生した亀裂等の損害を,事業主が被害者に賠償した上で,当該下請業者に対して,被害者に賠償した金額を損害として賠償請求した訴訟事件」
作業員の転落
労働安全衛生法で定められている(足場を安定させるための)作業床の設置、安全帯の着用といった安全対策を講じていなかったために、作業員が高所から転落するという事故が後を立ちません。
▼労働新聞「墜落防止措置を講じず送検 解体現場で脊椎損傷労災」
飛来・落下
労働安全衛生法では、解体用機械使用中は、飛来物の危険がある場所に運転者以外を立ち入らせてはならないと定められていますが、それを怠たったがために、作業員の頭部に飛来物が直撃するという悲惨な事故が起きました。
▼労働新聞「解体現場で頭に飛来物が直撃し死亡 建設会社を送検 立入禁止措置講じず」
解体業者が遵守すべき法律・ガイドライン
以上の過去に起きた事故を踏まえ、解体業者は、痛ましい事故がこれ以上発生しないように、安全対策を打つことが求められます。
依頼主としても、下記の法律や省令、ガイドラインがあることをあらかじめ理解しておき、解体業者の安全対策が十分になされているかどうかをチェックしましょう。
労働安全衛生法
この法律は、労働者の安全と健康を守ることを目的としています。条文にて、「労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確率、責任体制の明確化および自主活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」(労働安全衛生法第1条から引用)と記載されている通り、解体工事で起こりうる危険から作業員を守るための措置について定めています。
▼労働安全衛生法についてより詳しく知りたい方はこちら
(社)安全衛生マネジメント協会「労働安全衛生法とは」
労働安全衛生規則
労働安全衛生法に基づいて、労働の安全衛生に関する規則が策定されています。解体工事においては、アスベスト飛散防止策や解体用機械の取り扱いに関して、具体的な危険防止措置を定めています。
▼中央労働災害防止協会安全衛生情報センター「労働安全衛生規則」
国土交通省のガイドライン
①建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン
平成15年に静岡県富士市で発生した解体工事での痛ましい事故(参考:
)を受けて、国土交通省が発表したガイドラインです。
具体的には、「事前情報の提供・収集と調査の実施による施工計画の作成」「想定外の状況への対応と技術者等の適正な配置」「築物外周の張り出し部、カーテンウォール等の外壁への配慮」「増改築部等への配慮」「建築物の設計図書等の保存」といった安全防止措置を講じるよう推進しています。
詳しくは、国土交通省の下記サイトもご確認ください。
▼国土交通省「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドラインについて」
▼国土交通省「建築物の解体工事における外壁の崩落等による事故防止対策について」
②建築工事安全施工技術指針
事前調査や仮設物・足場等の計画、仮囲い(養生シート)の設置、機械の点検整備等といった解体業者が講ずべき安全策について、より具体的に明記されています。
▼国土交通省「建築工事安全施工技術指針」
道路交通法
東京都内や住宅エリアでの解体工事では、道路上で作業を行わなければいけないケースが多々あります。
そのような場合、解体工事中の道路上での事故等を防ぐため、解体業者は、事前に管轄の警察署から「道路使用許可」を得たうえで、工事をすることが定められています。
下記警視庁のサイトにて、申請手続きの手順等が解説されていますので、工事開始前に確認しておきましょう。
▼警視庁「道路使用許可の概要、申請手続等」
解体業者が独自で行う安全対策事例
解体業者によっては、経験や専門性を武器に、独自の安全対策を講じている場合があります。そういった高い意識で安全対策に取り組む業者を選ぶことで、未然に事故を防ぐことができます。
依頼する解体業者がどのような安全対策を講じてくれるのかを事前にHP上で確認したり、打ち合わせで直接尋ねたりしてみましょう。
KY活動の実施
KY活動とは「危険予知活動」の略称で、工事開始前に作業員同士で行われるシミュレーション・訓練活動のことを指します。
現場で起こりうる危険性について、事前に作業員同士で予想し話し合う機会を設けることで、作業における安全性や効率性を確保できるようになるため、多くの解体業者がKY活動を取り入れています。
5S活動の実施
5Sは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」のことを指し、これらの作業は安全で快適な現場づくりの基本となります。解体業者が各作業を丁寧に行ってさえいれば、工事現場の環境美化が保たれ、その分事故につながるような危険要素を取り除くことができます。
▼労働新聞「5Sから始まる職場づくり」
工事保険への加入
解体業者がどんなに安全対策を講じていたとしても、悪天候等の外的要因による事故のリスクは付きまといます。
もしもの時に備えて、解体業者と契約を結ぶ前に、保険(特に賠償責任に対応できるもの)に加入しているどうかについても確認しておきましょう。解体業者によって加入している保険の種類は異なるため、注意が必要です。
まとめ
解体工事における安全対策については、解体業者に任せきりにせず、依頼主側も当事者として共に考えなければいけないことです。
そうしなければ、工事費用を安く抑えることばかりに気がいってしまい、安全対策を怠るような解体業者に依頼してしまう事態にもなりかねません。また、第三者を巻き込む損害が生じた場合、依頼主も賠償責任を問われることがあります。
不要な事故・トラブルを避けるためにも、今回の記事を参考に、安全対策について解体業者とよく話し合ったうえで契約・工事を進めるようにしましょう。
2020.11.2